Take blog

勉強頑張りまth

東工大 物質理工学院 材料系 H30年度(31大修) I-05 物理化学

【1】東京工業大学大学院 物質理工学院の過去問を自身の勉強のために解いたものです。

【2】必ずしも解答を保証するものではありせん。間違いがある場合があります。

【3】過去問は各自で手に入れてください。

[A] (1) 水に電流を流して蒸発させた際の計算問題

①Hm=40.5 [kJ/mol], ②dU=37.4 [kJ/mol], ③dHm=1500 [J]

解説:

①モルエンタルピーHmの単位は[J/mol]であり、1AVs=1Jであるから、水の分子量18 [g/mol]を用いて以下のように計算できる。

※各単位のおさらい:A=C/s, V=J/C

②エンタルピーHとは経路関数である熱を状態関数で表すために用いられる関数であり、定義はH≡U+PinVである。従って、内部エネルギー変化dU=dH-PinVであり、理想気体においては気体の状態方程式(PV=nRT)を用いて「dU=dH-nRT」と整理できる。1 [mol]での内部エネルギー変化は①の答えと与えられたRTの数値を用いて以下のように計算する。

dUm=dHm-RT=40.5-3.1=37.4 [kJ/mol]

※1 [mol]よりH→Hm, nRT→RT (n=1)と記載している。

③定圧熱容量Cp=(∂H/∂T)pより、定圧時のモルエンタルピー変化dHmは問題文より与えられたCpと温度変化を用いて以下のように計算できる。

dHm=Cp,mdT=75.0×(393-373)=1500 [J/mol]

参考文献:Peter Atkins, アトキンス 物理化学(上) 第10版, p.81, (2017)

 

[A] (2)マクスウェルの速さ分布に関する質問

①V=√(2RT)/M :誤解がないように{(2RT)/M)}^(1/2)である, ②b) 475 m/s,

③まず、マスクウェルの速度分布を用いて<v2>を導出し、その後平均の運動エネルギーの式「」に代入することで計算できる。平均速さ<vn>は、分布関数の重みとしてvn積分することで得られる。

  

2乗平均速さ<v2>はn=2のときの計算を行うことで算出できる。

得られた式を用いて、平均の運動エネルギーは以下のように計算する。

④下図の条件で気体分子が壁に与える圧力を計算し、気体の状態方程式に代入する。

⑤④式中に無理やり運動エネルギー「」の式を作る。

問題中にあるM/R=m/kの関係を見逃さないこと。R=Mk/mである。

解説:

①f(v)が最大値をとるのは極値を取るときであるから、f(v)を微分してf' (v)=0を計算する。

②単位に気を付けながら、与えられている式に値を代入する。

<単位について>

③, ④, ⑤解答と同様。

 

[B] (1) 水素原子の電子軌道に関する設問

① a) シュレディンガー, b)主, c)方位, d)磁気, e)n, f)l

② a)以下に図示する。 b)余緯度0≤θ≤π、方位角0≤ϕ<2π, ③P(r)=r2 R(r)2, ④C

解説:

①a) 量子力学(粒子=波)による現象(原子の安定性)の記述。確率を表す波が満たす方程式をシュレディンガー方程式という。

①b)~f) 波動関数は電子のふるまいをすべて表現している。電磁の状態を決めるものとして「量子数」があった。

主量子数(n):電子分布の原子核からの大まかな距離。=電子殻の広がり(K殻, L殻…)

方位量子数(l):電子分布の大まかな形状を示す。=副殻の形(s軌道, p軌道, d軌道…)

磁気量子数(m):電子分布の形状を示す。=副殻の角度方向に関する形/副殻は縮重するものもある(ex. p軌道はpx, py, pzと三つある)。それぞれを分別している。

② a)3次元的な座標を表すにあたって、直角座標(x, y, z)と極座標(r, θ, ϕ)があった。波動関数では後者を用いて電子の分布を記述している。導き方は下図参照

② b)各角度の範囲は地球儀を考えるとわかり易い。緯度=θ(天頂角, 極角), 経度=Φ(方位角)である。二つの角で地球のすべての地点を示すことを考えよう。つまり下図のようになる。

③動径分布関数P(r)は半径rの殻のどこかで電子を見出す確率密度。

波動関数ψがψ=RYで表されるとき確率密度は|ψ|2=|RY|2であり、体積素片dτにおいて電子を見出す確率は|RY|2 となる。これは密度(1/体積)×体積によって無次元の確率が得られると解釈する。指定された半径において任意の角度に電子を見出す確率は、その任意の領域全体で積分して求める。

④動径波動関数は「主量子数(n)」と「方位量子数(l)」に依存する。

参考文献:若松寛, 5.5動径分布関数, Accessed:2021/08/02

 

[B] (2) 多電子原子に関する設問

①パウリの排他原理

②2p軌道は動径波動関数が動径r=0において0になるのに対し、2s軌道は有限の値を示す。これは2s軌道が2p軌道に比べて1s電子による遮蔽効果が小さく、電子がより高い確率で貫入できることを表している。従って2s軌道の方が強い有効各電荷を有するため安定化する。

③a)O:(1s)2(2s)2(2px)2(2py)1(2pz)1, b)フント則

解説:

フントの規則と混乱しないように。排他という部分で区別できると思う。
パウリの排他原理…ある軌道は最大で2つまでの電子を収容でき、もし1つの軌道に2つの電子が収容されるとき、その電子は互いに対になっていなくてはならない。
※言い換えると全く同じ量子状態(主, 方位, 磁気, スピン)の電子は存在しえないという原理。電子はフェルミ粒子であるためにスピン量子数が(+1/2, -1/2)しか取れない。そのため1つの軌道の電子収容数は最大2

②解答と同様

③考え方を以下に示す。

参考文献:静岡県立大学薬学部・薬学研究院, 原子の基本的構造, 原子の電子配置に関する問題, Accessed:2021/08/02