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勉強頑張りまth

【回折結晶学】回折現象とエバルト球

【1】東京工業大学大学院 物質理工学院の授業の復習です。

【2】自身の勉強のためのものであり、間違いがある場合があります。

1. 回折現象とは

 波が障害物の背後に回り込む現象のこと。波は一見すると到達できない領域に回り込む。これはホイヘンスの原理を認めることで以下のように理解することができる。

ホイヘンスの原理:波は波面上の各点から球面波(素元波)を無数に発生し、それらに共通する面が次の瞬間の波面になると考える。

2. Braggの回折条件と逆格子ベクトルへの適応

 Braggの式は結晶におけるX線回折を説明する式で、面間隔dを持つ平行な原子面群を考えたとき、隣り合う原子面の行路差が2dsinθとなることから、これがX線の波長の整数倍(n倍)と等しければ強い回折X線を生じるということを表す。

つまり、Braggの式は「2dsinθ=nλ」となる。

 次に、実格子で捉えてきたこの式を逆格子ベクトルで記述することを考える。

 上図はhkl面についてBraggの回折条件を示した図である。ここで、S0およびSはそれぞれ、入射ベクトルの単位ベクトル、反射(回折)ベクトルの単位ベクトルである(つまり大きさ|S0|=|S|=1ということ)。図のように二つの単位ベクトルの差を取ると、hkl面に垂直で大きさが2sinθとなるベクトルが得られる。この向きは逆格子ベクトルに等しい。また、dhklの逆数は逆格子ベクトルの長さとなる、これらをBraggの式に当てはめると式中に逆格子ベクトルを出現させることができる。

3. Ewald球 (エバルト球)

 逆格子ベクトルで記述したBraggの式を絵に示したものが以下の図である。

 エバルト球とは、ある逆格子点Oから、入射方向に沿って1/λだけ離れた点Aを中心とした半径1/λの円である。逆格子点が球(円)上にあるときは逆格子ベクトルが回折条件を満たすことになる。つまり、エバルト球は回折する逆格子点を視覚的に表すことができる。

 しかし、工夫をせずに使うとエバルト球上にくる逆格子点はめったに存在しないため、回折がほとんど観測できない。実際の実験系ではエバルト球上に逆格子点がでくわすように以下のような工夫が行われいている。
末法:粉末試料は勝手な方向を向いているため、X線の入射方向と結晶の方位を変えることができる。これによりエバルト球上に逆格子点が出くわす可能性が上がるため、回折を観測しやすくなる。

ラウエ法:様々な波長を含む白色X線を用いることでエバルト球の半径(1/λ)を可変にできる。これによりエバルト球が幅を持つため、回折を観測しやすくなる。入射方向や結晶の方向は固定。

参考文献

・日本電子株式会社HP, エワルド球, Accessed:2022/07/09

慶応義塾大学理工学部HP, 回折現象と逆格子, Accessed:2022/07/09